『東京探索033』 新宿エリア⑨
浄水場から生まれた新宿新都心
現在の新宿新都心の中心、いわゆる「超高層街区」は、実は、1965(昭和40)年まで都民に水道水を供給する淀橋浄水場だったのです。新宿エリアで、もっとも劇的な変化を遂げた場所と言ってよいでしょう。
高度成長期半ばの1965年前後、東京のオフィス需要は急速に旺盛になり、当時随一のオフィス街であった丸の内、大手町~虎ノ門エリアなどの都心地域だけでは対応できなくなりました。
プランナーたちは、新宿駅に近い交通便利な場所にあるこの浄水場に注目し、それを郊外に移転し、跡地に新たに「副都心」を建設するアイディアを提案するに至ったのです。1960(昭和35)年には西口エリア96haに「新宿副都心計画」が定められ、淀橋浄水場を中心とした56haの都市基盤整備について「新宿副都心計画事業」が東京都により都市計画決定されました。
1966(昭和41)年には新宿駅西口地下広場が完成、副都心区域の都市基盤施設も整備されました。元浄水場の都有地11区画は、入札を経て12社の民間事業者に売却され、1971(昭和46)年完成の京王プラザホテルを皮切りに超高層ビルが次々と建設され、「新宿新都心」と呼ばれるようになりました。1991(平成3)年には、この一角に東京都の新庁舎が建設されて、業務施設立地のポテンシャルがさらに向上しました。
プロジェクト開始から50年ほど経過した今、周辺の街区にも市街地再開発事業などで次々にビルが建ち、東京を代表する業務地区の一つになっています。ここが以前浄水場であったことを示すものは、実は随所にあるのですが、それについては次回ご紹介します。