『東京探索028』新宿エリア④
新宿エリアのゴールデンライン
古い街にはつきものですが、新宿にも老舗がいくつかあります。「TAKANOフルーツパーラー」で有名な新宿高野は、副業として果実販売をしていた高野商店が1900(明治33)年に「果実問屋・高野商店」の経営を始めたのが発祥で、1920(大正9)年にマスクメロンの販売を開始、翌年にはフルーツパーラーの原型である「縁台サービス」を始めています。
もう一つの有名どころ、新宿中村屋は、1909(明治42)年に本郷東大正門前から移転して菓子や缶詰の販売を始めたのが原点で、1927(昭和2)年には喫茶部(レストラン)を開設、メニューに「カリーライス」を出し、同時に缶入りの「純印度式カリー」を売り出し始めました。この画期的なカレー誕生の背景には、創業者夫妻がインド独立運動の志士を匿ったエピソードがあるようです。
1959(昭和34)年には、営団地下鉄丸ノ内線が開通し、この地域には新宿駅及び新宿三丁目駅が開設されました。丸ノ内線の駅間距離は平均約1kmですが、新宿駅~新宿三丁目駅の区間は約300mと東京メトロの全線の中でも最も短くなっています。同時に、地下街「メトロプロムナード」が開設され、その後西武新宿駅方面まで延びる「サブナード」や、JR新宿駅東口へとつながる「ルミネエスト」など地下街ネットワークが形成される基礎を創りました。伊勢丹は、この「メトロプロムナード」に面して2箇所の出入り口を設けています。
このプロムナードの上部にある道路は新宿通りですが、TAKANO辺りから伊勢丹本館、新宿三丁目交差点までの300mほどの区間は特別なエリアです。新宿中村屋、三省堂書店、ビックロ、マルイ新宿店など新宿を代表する店舗が並んでおり、まさに新宿の「ゴールデンライン」と言ってよいでしょう。実際、この区間の路線価は毎年、周辺の主要な街路と比べて約倍以上の価格がふられています。フランスの一流ブランドが路面店を出店するとき、このゴールデンラインにこだわったのもうなずけます。
なお、新宿駅西口に百貨店が開店したのは戦災復興も一段落した60年代です。小田急百貨店は1962(昭和37)年に東京建物新宿ビル(現在の「ハルク」) において創業、その後1966(昭和41)年に完成した新宿地下鉄ビルディングと、その翌年に完成した 新宿西口駅ビル(現:小田急新宿駅ビル)南側の部分を併せて新たに本館としています。京王百貨店は、1964(昭和39)年、京王電鉄新宿駅の地下化に伴う再開発で京王ビルが建設され、そこに創業しました。