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2019.09.03

『東京探索038』上野エリア① 国立西洋美術館のル・コルビュジエ展

『東京探索038』上野エリア①

国立西洋美術館のル・コルビュジエ展

上野公園内の国立西洋美術館で「ル・コルビュジエ展」が開催されていて気になっていたのですが、なかなか時間が取れず、最終日の前日、518日にようやく観に行くことができました。建物自体が、スイスが生んだ「近代建築の祖」による珠玉の芸術作品です。パリ郊外の「サヴォア邸」をはじめ、この建物を含んで7カ国に存在する17作品が「ル・コルビュジエの建築作品」としてユネスコ世界遺産に指定されたのは2016(平成28)年のことでした。巨匠の作品の建物内部で、彼自身の絵画などを鑑賞できる機会を逃したくなかったのです。

久しぶりにJR上野駅の公園口に降り立ちました。上野駅は、東南側の「広小路口」は1階レベルなのに、西側の「公園口」は3階レベルで20m近い高低差があります。そういえば、上野公園の南端、西郷隆盛の銅像がある「山王台」は、鋭角な三角形の台地ですが、その東側は、山手線田端駅あたりから続く「日暮里崖線」という古代の海岸線の南端にあたり、西側は石神井川の支流である谷田側が台地を侵食して海に流れ込む河口だったのですね。

「公園口」正面には東京文化会館があり、その脇をぬけて右に折れると国立西洋美術館が見えてきます。正面の小石が埋め込まれたコンクリート板の外壁を眺めてから、メインエントランス前のピロティにできていた長蛇の列に並びました。この「ピロティ」もル・コルビュジエが提唱した近代建築5要素の一つですが、その天井や柱からは、無駄をそぎ落とした機能美を感じます。1959(昭和34)年竣工ですが古さを全く感じることはありません。内部に入るとすぐに、「19世紀ホール」の吹き抜け空間が広がります。天井の幾何学的なトップライトがなんとも美しく、まさに、ル・コルビュジエの言う「えもいわれぬ空間」です。これを観ただけでも、「来てよかった」と思いました。

展示物は絵画が中心でしたが、ル・コルビュジエのピューリズム静物画の制作過程を紹介する短いビデオが秀逸で、静物の配置の中にもさりげなく黄金比を使っていることが理解できました。建築の世界に「モデュロール」(ル・コルビュジエによる造語。モジュール+黄金比。)を導入した天才の面目躍如です。後半、サヴォワ邸の模型の展示を見た頃には、すっかりル・コルビュジエの世界に魅了され、至福の時を過ごせました。

そして、改めて、このような素晴らしい文化に触れられる場所が上野に数多くあることを認識しました。ということで、「東京探索」シリーズとして、しばらく上野を歩いてみたいと思います。お付き合いください。

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