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2019.12.03

『東京探索051』渋谷エリア⑤ 新生渋谷PARCOの立体街路

『東京探索051』渋谷エリア⑤

新生渋谷PARCOの立体街路

公園通りのシンボルである渋谷PARCOが、3年間の休業を伴う全面建替えを行い、1122日に再オープンしました。従来型の百貨店、ショッピングセンターがアウトレットやeコマース(いわゆるネットショッピングなどの電子商取引)に押され気味の時代にあって、PARCOがどのように変わり、何を目指しているのかが気になって行ってみました。冷たい雨が降り、北風も強い日でしたが、渋谷駅のハチ公口からセンター街、スペイン坂を抜けると、誘導員に指示されながら入場していく長蛇の列が見えてきました。

渋谷PARCO(パルコ)が開業したのは1973年のことです。当時、前面道路は区役所通りと呼ばれていて、渋谷駅周辺の喧騒から少し離れて、松濤などの高級住宅街にも隣接する住宅街でした。渋谷PARCOは渋谷駅から徒歩6分と駅前とは言えない立地でしたが、「渋谷公園通り」を含めた秀逸なキャッチコピーも功を奏して新たな人の流れを生み出しました。

時代は高度経済成長期から安定成長期への転換期。感性を拠り所に街の活性化を目指す、それまでになかった戦略を展開したのがPARCOでした。実際、公園通りを行き交うファッショナブルな人々が渋谷のイメージを変え、歩くだけでもワクワクする街を創ったと言えるのではないでしょうか。銀座に行かない若い世代が自己主張を始めた時期に適合したのかもしれません。新たな文化の香りは、コピーライター、アーティストといったいわゆる文化人の共鳴を呼び、周辺に波及していきます。今はJフロントリテイリングの傘下にあるPARCOですが、渋谷の文化を支えてきたという自負は脈々と生きているようです。

新しい渋谷PARCOは積み木を積んだような構成で、以前のPart1Part3を合わせたボリュームで、1階の中央にはペンギン通りとオルガン坂とを結ぶ歩行者専用通路「ナカシブ通り」を創り出しました。ちょうどスペイン坂を登り切ったところにこの通路があり、自然に店内へと誘導されるような仕掛けで、この通路からも両側の店舗の多様な表情が生き生きと見えています。

6階には任天堂の公式ショップ「Nintendo TOKYO」をはじめ、「CAPCOM STORE TOKYO」、少年ジャンプの「JUMP SHOP」などを配置、7階~9階はPARCO劇場です。新たな刺激や楽しさといった体験価値を提案し、グローバルに情報を発信する「次世代型商業施設」とのことで、斬新な商環境デザインは英国の大手設計事務所Benoyが担当しています。建物の外周に沿って6階の売り場、さらにPARCO劇場、その次に屋上庭園まで螺旋状の「立体街路」で登ることができます。内部もエスカレーターで登りながら廻ってみても、通りを歩いているような感覚で、スペイン坂やペンギン通りの雰囲気がそのまま持ち込まれているという感じがしました。

都市デザインや建築デザインでできることは、「場」を提供することです。そして、このような場で、人々がどんなスタイルで歩き、話し、何をしていくかが重要で、それらが渋谷の新しい風景を創っていくことでしょう。

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