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2018.10.23

『アジア探索033~台湾編⑩』ライフスタイル提案型商業施設~誠品書店その2

『アジア探索033~台湾編⑩』

ライフスタイル提案型商業施設~誠品書店その2

誠品書店は臺湾各地に約40店舗、臺北市だけでも18店舗を展開しています。臺湾各地のデザイン性に優れた雑貨や品質の高い食品も多数扱っており、日本人旅行者にとっては臺湾でのお土産購入の穴場になっています。ところで、誠品の英語名「eslite」は、「エリート」を意味するフランスの古語で、これは「人生を謳歌しようとするすべての人」を意味します。このネーミングもおしゃれですね。

誠品信義店が最大で、地上6階、地下2階まであります。「誠品書店」と名づけているのは3階だけで、あとはフロアごとに下から、誠品美食(グルメ)、誠品流行(ファッション)、誠品視界(ビジョン)、誠品設計(デザイン)、誠品風尚(モード)、誠品生活(ライフスタイル&子供)、誠品文化(カルチャー)という具合です。2階は誠品信義店の中でも最も注目してほしいフロアだそうで、デザインアイテムとデザイン系の本を一緒にレイアウトしています。また、「誠品知味」というコーナーがあり、臺湾各地のこだわりを持つ企業の商品が並んでいます。

今や日本でも「ライフスタイル提案型」施設は一つのトレンド、キーワードになってきており、様々なユニークなホテル、物販と飲食の境界がなくなった一体型の商業施設などが出現しています。そこに行けば楽しめる場所、居心地が良い場所、人が自然に集まってしまう場所を目指すなど、都市開発や街づくりの指向も、「モノ」ものから「コト」へ変容しています。代官山T-SITE、枚方のT-SITE、二子玉川蔦屋家電などはそのようなトレンドの典型事例でしょう。

チームラボの猪子寿之さんを始め、プロジェクションマッピング、LEDなどを使ったディスプレイの世界は、日本の方が進んでいるかもしれませんが、臺湾のWTC(世界貿易センター)の商業施設のエスカレーター周りのデジタルサイネージなどは、2年前から比べると相当に進歩していました。もはや箱を作るハードの建築だけでは魅力作りが続かず、絶えず変化するソフトを組み合わせた世界が、人を集めるようになりつつあるのです。商業施設だけでなく、オフィスも同様だと思います。

蔦屋書店は、実は臺北にも出店しています。TSUTAYA BOOKSTORE信義店が2017124日に、松山駅前店が同年1124日 に、さらに臺北MRT内湖駅併設の複合商業ビル「CITYLINK」に3号店が2018329日に相次いでオープンしました。販売されている約15,000冊の本の中には日本語書籍、臺湾では手に入りにくい洋書も取り揃えているそうです。文具コーナーでも9割の商品を日本から厳選して持ってきているとのことです。やはり、「ライフスタイル提案」をテーマに、日本人の目指しているライフスタイルに関する情報をシェアしたいような意図を感じます。

逆に、誠品書店は、いよいよ日本への進出を決めたことが先日の日本経済新聞で報道されました。三井不動産が日本橋再生計画の一環として進めている室町再開発のテナントとして2階の数千㎡を使い、ガラスや革細工のワークショップなど「コト消費」の場を展開するとのこと。臺湾、日本の「生活提案型ショップ」がお互い相手国に出店しあうというのは、何とも面白い現象ですね。

臺北にも、多くの日本統治時代の建築が残されています。特に、臺湾の政治・経済の中枢を担う中央官衙(博愛特區)には、総統府(旧臺湾総督府)、臺北賓館(旧臺湾総督官邸)、司法院(旧総督府高等法院)、監察院(臺北州庁)、臺湾銀行などが立ち並び、臺北のシンボルにもなっています。市内にも多くの日本統治時代の建築が点在していて、その多くが文芸施設やレストランとして改築され保存されているそうで、市内郊外の北投温泉街もその一例だそうです。

駆け足で臺湾を探索してきましたが、全体を通して、やはり日本人や日本文化が好きな臺湾人、という印象を受けました。底流には中国文化の影響や漢民族の気質などが流れているのでしょうが、「文青」に代表されるように欧米や日本の文化の良いところは素直に吸収して自分のものにして行こうという柔軟性も感じることができます。国内マーケットはけっして大きくは無いのですが、良いものを作れば中国本土の巨大市場に売りさばくことができます。そのように臺湾は、世界の中での特殊な立ち位置にある地域であり、アジアの縮図のような不思議な国とも言えるのでしょうか?また、折を見て探索したいと思います。(台湾シリーズ おわり)

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