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2018.10.16

『アジア探索032~台湾編⑨』ライフスタイル提案型商業施設~誠品書店その1

『アジア探索032~台湾編⑨』

ライフスタイル提案型商業施設~誠品書店その1

臺北に話を戻します。このシリーズ第2回でご紹介した松山文創園區の敷地内に、「松山臺北文創ビル」があります。これも伊東豊雄建築事務所の設計によるもので、臺北市と、民間の「富邦集団」の共同出資による臺湾のクリエイティブ産業を後押しする施設になっています。

今、臺湾では、「文青」ムーブメントが起きているとのこと。「文芸青年」の略で、女性の場合は「文青少女」と呼ばれ、2012年に登場したスマートフォン向けアプリ「文青相機」が火つけ役となって広まったトレンドだそうです。このアプリは画像の加工は簡単にしかできませんが、画像に「文青っぽい」一言を付けられるのが特徴で、臺湾版インスタグラムといったところでしょうか。

「文青」が志向するライフスタイルは「マイナーな音楽や映画を好み、黒縁眼鏡をかけ、やせ型でスキニーパンツを履いて、自分の世界を大切にすること」。ここから「文青風」「文青路線」といった名詞も生まれ、臺湾の若者に広く息長く浸透しているようです。臺湾のネット上に「文青の特徴45項目」がまとめられていますが、そのひとつに、「誠品書店が好きで、良く行く」という項目があります。

松山臺北文創ビルには、クリエイティブなオフィスの他に、地下1階から地上3階を、「誠品生活松菸(Song Yan)店」が占めていて、建物東側の3階から13階には系列の誠品行旅(Eslite Hotel)というホテルも入っています。

臺湾最大の書店チェイン、生活提案型の書店として知られている「誠品書店」は代官山蔦屋書店(T-SITE)や二子玉川蔦屋家電と同様に、書籍と一緒に商品も売られているということだったので気になっていました。誠品生活松菸店の中に入ると、確かに自転車や小物、雑貨などが売られていますが、蔦屋書店を見慣れていると、目新しさは感じないし、売り場も広いとは感じません。それなりにディスプレイを工夫しているのですが、どこかが違うような気もします。いずれにしても、百貨店文化健在の臺湾において、単なる書店ではなく、「生活提案型」の商業施設という業態を開発した先駆者であることは確かでしょう。例えば、地下1階には、世界最高峰のベーカリーコンテストで優勝したパン職人吳寶春氏のパン屋さんが入っていて、朝から行列ができていました。

誠品行旅の内部も、感覚を刺激するような空間です。ロビーには5,000冊の本がインテリアの演出を兼ねて置いてあります。地下2階にある映画館〈誠品電影院〉の通路もまた、星空のような黒い天井と赤い床、打ち放しの壁など、とびきりスタイリッシュな空間です。

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