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2018.07.10

『東京探索012』虎ノ門エリア④ 立体道路制度による超高層建物の実現

『東京探索012』虎ノ門エリア④

立体道路制度による超高層建物の実現

実際に、「立体道路制度」を利用した建物の計画が練られましたが、初期の案では、40m幅の道路の両側にそれぞれ幅9mの側道を設け、中央の22m幅については、地下は本線車道、地上は8階建て建物の敷地とするものでした。これにより、従来の方法で道路用地を全面的に買収する金額に比べて、22m幅については「区分地上権」相当分を買収すればよく、用地取得費が最大40%削減できるというのが東京都の目論見でした。

しかし、長年権利制限に耐えてきた権利者にとって、このような奥行きの浅い8階建てのビルに再入居するという案は必ずしも魅力的に映らなかったようです。ここから、より良い計画案を求めて権利者、行政、民間ディベロッパー、コンサルタントの息の長い探求が始まりました。

「環状2号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業」においては、40m幅の環状2号線の区域と合わせて、新橋よりから虎ノ門よりに向かって第一街区、第二街区、第三街区と呼ばれる3つの建物敷地が設定されました。このうち最も敷地面積が大きい第三街区に超高層ビルを建てるという発想がコンサルタントから提案されました。計画案策定のために第三街区の容積率をいかに高めるかが検討される中で、道路区域内に設定した建築敷地について、いったん容積率を定めた上で、その容積を第三街区に移転できないかという議論がなされたのです。これはいささか無謀なアイディアに見えますが、その後、地区計画制度が整備拡充され、それらを適用することにより、最終的には「虎ノ門ヒルズ」の現在の形が実現できたのです。

さらに言えば、超高層棟が道路の半分の幅員をまたぐような形になったのは、森ビルが特定建設者として正式に決定してからのことで、それまでは道路上には高層棟を建てない形で検討されていました。当時社長だった森稔氏の「せっかく立体道路制度を使うのだからシンボリックにしよう」という鶴の一声で、今のような形になったそうです。

公共団体施行の第二種市街地再開発事業で、このように民意を反映した再開発が実現した影にはおそらく、地元権利者、行政、コンサルタント、民間ディベロッパーそれぞれに「猛者」がいたことが想像されます。

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