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2019.12.24

『東京探索054』渋谷エリア⑧ 銀座線渋谷駅を内包した東急東横店

『東京探索054』渋谷エリア⑧

銀座線渋谷駅を内包した東急東横店

1927(昭和2)年に渋谷に乗り入れてきた東急東横線は、JR山手線の架線の上を跨いで大きくカーブして東口側に入り、渋谷川と山手線の線路の間の狭い土地に駅を作りました。あの連続する蒲鉾型屋根が目印であった駅を覚えている方も多いでしょう。

1934(昭和9)年、その東横線渋谷駅の正面に「東横百貨店」が開業しました。7階建て、延床面積は11,468㎡と小ぶりですが、池袋の「菊屋デパート」(西武百貨店池袋店の前身)とともに、ターミナル立地百貨店の草分けです。東横百貨店は東京西部の人口の増大を背景に沿線住民等の人気を博したようで、これが後に、東急百貨店東横店東1号館となります。

東急東横店は増築を繰り返していきます。山手線の東側においては、1937(昭和12)年に地下鉄渋谷駅下部に東2号館を建設し、1951(昭和26)年には地下鉄上部の5階~7階を、1956(昭和31)年に東3号館を増築しました。1951(昭和26)年から1953(昭和28)年までの短い間ですが、東館の屋上から玉電ビル(現在の西館)の屋上まで行って帰ってくるだけの空中ケーブルカー「ひばり号」が子供限定の遊覧用に運行されていたそうです。

さらに、山手線の西側において、1954(昭和29)年に12階建ての西館を建てるのと同時に東西をつなぐ中央館(5階~7階のみ)を建てて、1970(昭和45)年に西館と接続する8階建ての南館を増築しました。西館のうち地下1階~9階が百貨店ですが、前回お話ししたとおり銀座線を内包する形であるため、3階・4階には売り場が無い「中抜け」のフロア構成になっていました。

渋谷マークシティも京王井の頭線の渋谷駅を内包していますし、東京各地、日本の各都市にも同様の事例はありますが、ここまで複雑なフロア構成の百貨店は他にないのではないでしょうか? 背景には、商業施設の空間構成より鉄道乗客の乗換え等の利便性を優先する鉄道マン五島慶太氏の心意気を感じます。

その東急百貨店東横店も、20203月に86年間の歴史に幕を閉じ、渋谷スクランブルスクエア第二期として2027年に生まれ変わる予定です。東京メトロ銀座線渋谷駅の新駅は、渋谷スクランブルスクエア第一期のすぐ北側、明治通りの真上に、アーチ状の屋根を持つ明るい駅として14日に開業します。これまで奥ゆかしく建物の中に隠れていた駅が、ついに陽の下に出て来ます。

 

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