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2018.06.05

『アジア探索023~シンガポール編⑨』政治的安定性の中での計画的成長

『アジア探索023~シンガポール編⑨』

政治的安定性の中での計画的成長

国家をゼロから築き上げ、東南アジア随一の豊かさを育んだ稀代のリーダーである李光耀(リー・クアンユー)氏は、1999年の「日経ビジネス」のインタビューに答えて、「日本経済がバブル崩壊以降停滞していたのは、日本が国際市場に向かって十分に開かれていなかったことが最大の原因だと思う。最初は繊維製品で、次に石油化学製品、船、鉄鋼そして自動車、エレクトロニクスというように順次特定の商品で極めて生産性の高い国になり、大きなシェアを獲得したが、同時に国内に過剰設備を抱え込んでしまった。国内市場が保護されており、国際市場からのシグナルに従ってなされなかったため、資源の再配分の仕方を間違えた。キャッチアップの時代には官主導の日本モデルが有効であったが、追いついた後は国際市場のシグナルに従って決めなければならない」という意味のことを言っています。

また、シンガポールが中国語に加えて英語も公用語にしたことに関して、その後のインターネットというアメリカの発明によって加速されたアメリカ人の「グローバルスタンダード」の世界の中で、英語堪能な国民が大半を占めるシンガポールが優位性を持てたことは幸運であったと述べており、日本も英語を第二公用語として、中学生全員が英語を上手に使いこなせるようになることが重要だと助言しています。

近年、「一帯一路」構想など、中国が世界におけるプレゼンスを増そうとしている中でも、中国語も自由に操って商機を増やせるシンガポール人は、さらに優位性を持つことになるかもしれません。

2015年の李氏逝去後、世界のメディアが特集を組みましたが、National Public Radioの記事によれば、李氏がかねがね主張していたのは、西洋式の民主主義よりも、一党独裁の方がより効率的で東アジアの社会によりよく適合している、ということでした。彼によれば、「東アジアの社会は、家族主義的で教育志向が強く集団主義的」であるとして、これを「アジア的価値観」と呼んでいたのです。日経ビジネスのインタビューに戻ると、李氏は「中国や日本、シンガポール、韓国などが共有している儒教について言えば、その価値の重要性はいささかも衰えていない。統治者と被統治者、夫と妻、父親と息子、兄弟姉妹、そして友人同士の『5つの人間関係』は、欠くことのできない決定的なものだ」と言っています。

アジアにおいて、真に民主主義が根付いている国はどれだけあるでしょうか?賛否両論あると思いますが、シンガポールの「開発独裁」は、反対勢力を抑圧した歴史はあるものの、小さな国が先進国となるためには最良の方法であったのかもしれません。実際、政治的安定性の中での計画的成長が実現しているのです。

9回を数えたシンガポールの探索ですが、以下の言葉で締めくくりたいと思います。シンガポールから見れば「大国」と見られている日本ですが、我々がシンガポールから学ぶことも多いのではないでしょうか?

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