ブログBlog

2017.12.12

『東京探索番外編003―TODの系譜③』TODの典型事例その1-品川駅東口地区

『『東京探索番外編003TODの系譜③』

TODの典型事例その1-品川駅東口地区

品川駅東口の駅前に、周囲の街並みと比べると高層ビルがひと際密集している一角があります。今回は、この品川駅東口開発プロジェクトについて紹介します。

開発区域は16ヘクタールで、以前は国鉄(現JR)の車輌基地で、周辺も倉庫などが並ぶ「準工業地域」でした。1980年代の後半、政府が国鉄の累積債務の減少策や民間活力の活用による都市開発等を通じた景気浮揚策を画策していた中、国鉄は、目玉となるプロジェクトのひとつとしてこの車輌基地の機能を移転させ、跡地において大規模な土地利用転換を進める案を浮上させたのです。

品川駅東口は「港南口」と呼ばれ、西口が高輪のホテル街や御殿山の高級住宅街等に面して早くから発展していたのに対して、小さな改札口しかないいわゆる「駅裏」で、車輌基地の周囲の道路も脆弱でした。

第一期用地の民間不動産事業者への処分の後、東京都は関係者と協議を経て開発マスタープランを策定しました。周囲の道路を拡幅したうえ、4筋の25メートル道路で「海岸通り」と結び、地区内の2階レベルの歩行者ネットワーク、各ビルにアクセスできる地下車路ループなどの整備を民間事業者が行うことで、従前400%であった容積率を900%~1000%前後まで引き上げる開発計画が実現したのです。

品川駅東口においては、高密度の開発が段階的に行われ、しかも第二期は7社に分譲されることとなったため、1988年に創設されたインセンティブ型の地区計画「再開発地区計画(現「再開発促進区を定める地区計画」)」によってマスタープランが担保されました。それぞれの画地が面する幅45メートル、長さ400メートルの公共空地、その上部を利用した歩行者ネットワーク、その地下を利用した地下車路ループなどがこの地区計画で定められています。

特筆すべきなのは、この品川駅東口開発計画を検討する過程で、権利者でもあったJR東海が、計画エリアの調整によって新幹線新駅をここに建設することを提案したことです。これはJR東海にとっては輸送力増強や遠距離・中距離列車間の乗換え利便性向上、不動産開発事業者にとっては品川駅のポテンシャル上昇による地区全体の不動産価値増大という両者にとってメリットのある提案で、これにより地区の開発はさらに加速したのです。

第1期は品川インターシティとして1998年に竣工、新幹線品川駅が2003年10月に開業し、2004年3月には第2期が品川グランドコモンズとして5棟の高層オフィスビル、2棟の高層マンションが完成しました。

PAGE TOP