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2017.11.28

『東京探索番外編001―TODの系譜①』日本の大都市ではTODが当たり前

『東京探索番外編001TODの系譜①』

日本の大都市ではTODが当たり前

東京探索の番外編として、TODに関してしばらく連載させていただきます。

TODとは、公共交通指向型都市開発(Transit Oriented Development)のことで、この言葉そのものは、1980年代に米国の都市計画家ピーター・カルソープ(Peter Calthorpe)によって提唱されたものです。

TODは、一般的に「人々が交通サービスの近くで暮らし、運転に依存することを奨励する混合使用コミュニティ」と定義されており、この概念は「次のアメリカの大都市」のガイドラインを示しています。近年、中国やアジアでもこの言葉をよく聞きます。

わが国では、TODの概念は、古くから都市開発の基本理念として使われてきています。もともと、1910年代から1930年代にかけて、鉄道及び不動産に関して関西で小林一三氏が興した阪急電鉄へとつながる事業、東京で渋沢栄一氏や五島慶太氏らが興した東急電鉄へとつながる事業などは、TODの草分けといえるものです。

鉄道用地とその沿線宅地の用地買収、都心側ターミナル駅に百貨店、郊外側終点駅に娯楽施設を設置し、沿線宅地においては住宅地開発を行うというビジネスモデルが確立され、各社により採用されました。そして、これが東京周辺の市街地の拡大を可能にし、高度成長期の東京への人口集中、企業の発展を支えたとも言えるでしょう。

東京への通勤・通学圏の人口は国勢調査における「関東大都市圏」の定義によれば約3,450万人(2010年)と言われています。そして、2010年国勢調査に基づく東京都の公表資料によると、東京都の昼間就業者は817万人、昼間通学者は178万人で、東京都への流入人口は289万人にのぼります。

これらの流入人口の大部分が、公共交通を利用しています。東京都環境局の資料によれば、東京23区、ニューヨーク市、大ロンドン圏における通勤・通学者の公共交通利用率はそれぞれ75%56%47%であり、自動車のみで通勤・通学する者の割合はそれぞれ、6%34%40%だそうです。

このような背景から、不動産の立地条件に対する考え方も、日本と海外ではまったく違っているのです。例えば、日本の大都市やその周辺における不動産の販売や賃貸の広告では、駅から徒歩何分であるか、あるいはバス利用なのかが最も重要な情報のひとつになっています。また、商業施設の立地に関しても、日本の大都市では「駅前立地」であることが大きなアドバンテージになります。しかし、海外の大都市では必ずしもそうではないのです。

日本の大都市ではTODは当たり前になっていると言えるでしょう。

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